2006年01月20日

石川雅望「ねざめのすさび」○漢音呉音にて書をよむ事

  ○あるひとのいはく、儒書は漢音もて読べし。仏書と医書は呉音にてよむこと、いにしへのならひなりといへり。
考るにしからず。仏書を呉音もてよむべからずといへること。いにしへ既に天子の命あり。日本紀略云。〔桓武天皇延暦十年閏十一月、〕辛丑。勅。明経之徒不v可v習2□《呉カ》音1。発声誦読既致2訛謬1。熟2習漢音1。と見えたり。これは儒家の事なり。又類聚国史百八十七仏道部。〔延暦十二年四月〕丙子。制ラク。自今以後。年分度者。非vレハ習2漢音1。勿v令2得度1。また同巻百七十九に、〔延暦二十五年〕辛卯。宜3華厳業二人。天台業二人。律業二人。三論業三人。法相業三人。分v業勧催共令2競学1。仍須各依2本業疏1。読2法華金光明二部経1。漢音以及v訓2経論之中1ヲ云々。若有2習義殊高1。勿v限2漢音1。と見えて、あまたゝび漢音もて書をよまんことの詔ありし也。されど呉音に熟したる故にや、いまに漢音をばしらぬ僧もおほし。呉音をもて仏書はよむべきにかぎれりとおもふはひがことなり、
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2005年06月16日

唐音(善庵随筆・和学弁)

○和学弁に、ひとゝせ長崎にて、唐人の旅館より一日寺〔割註〕コレ一曰示ナルベシ、訳家必備にも、一曰示一百斤ト載セタリ。」と書付て是をとゝのへくれよと、通詞の方へ言おこしたるに、皆々寄合て何の事やら合点せず、誠に唐人のねごとなり、されどすて置べきやうもあらで、聖廟の総裁向井玄升に見せぬ、是もとくと合点せず、やゝしばらく過て、玄并云は、もし唐音にてよまば、知るゝ事あらんと、唐音によみければ、早速事済たるよし、一日寺《いわし》とよめば、日本人が早く合点すべきと、余り唐人の念の入過たるよりおこりたる事ぞかし、トアレドモ、コレハ長崎ノ事、不案内ナル人ノ、一曰示ト書ケルヲ見テ、珍シキコトニ思ヒシヨリノ造語ト思ハル、長崎ニテ唐人応用ノ物件ヲ乞フニ、必ズ単子ヲ用ユ、通詞唐人ヨリウケトリテ、先ヅ唐音ニテ読誦一過シ、日用アリフレシコトハ、直ニ宿町へ申シ付ケ、コトカハリタルハ、翻訳シテ其役筋へ出ス、唐人スベテ日本産ノ漢名ナキモノ、或ハ漢名分明ナヲズ、又ハマギラハシキ物件ヲ、単子上ニ書載スルニハ、一言ノ下ニ会得シ易カラシメンタメ、唐音ヲ以テ日本語ニ填字ス、鯔魚《イワシ》ヲ一曰示、〓木《カシ》ヲ加真、鰹節《カツホブシ》ヲ憂子魚、畳《タヽミ》ヲ蹈蹈面、フスマヲ□司馬、苫《トマ》ヲ套馬、弁当ヲ便道、重箱ヲ受百菓、トイフノ類、枚挙ニタヘズ、コレ常ノ事ナレハ、ナンゾ合点セヌコトノアルべキヤ。

随筆大成旧1-5(新1-10)
古事類苑 文学部 第二十七 外国語学
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2005年06月11日

昌平黌の唐音(『旧事諮問録』)

旧事諮問録第六編
第八回 明治二十四年十一月七日
昌平坂学問所の事追補学問所規則覚書
答問者 旧幕学問所勤番組頭 石丸三亭
岩波文庫による
◎問 聖堂に医者がおりましたか、吉田とかいう医者がいたということですが。
◎答 さようです。吉田と杉本両人ありました。また、已前《いぜん》は長崎より唐通事《とうつうじ》が在勤しておりました。自然、唐船漂着等の節通弁の用意、かつ唐音《とういん》を学びたい者は教わったようです。(p149)
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韻鏡は唐音を正す書(平賀中南『学問捷径』)

今の通事、詩も詩経も平常読書の通りに読むゆへ声律一向に分れず。今の通事、韻鏡は唐音を正す書なることを知らず、名乗を返す書のみと思ふて居るやうの浅間しきことなり

江戸時代支那学入門書解題集成3 p162-183
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唐音を知らねば(平賀中南『学問捷径』)

詩は諷咏の物にて声律第一なり されども唐音を知らねば声律を正すこと能はざるなり

江戸時代支那学入門書解題集成3 p157
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大潮・唐音(『学問捷径』)

平賀中南『学問捷径』(日新堂学範)(安永八年刊)巻中
呼火口乾呼雪歯寒と云ふことあり。火音はホウなり。ホウと云へば口中あたゝかになる故に口乾くと云ふ。雪の音はシと云へば歯に風しむやうなり。故に歯寒しと云ふ。大潮和尚この言を宇野三平の前にて唱へられしかば。三平取りあへず呼虎風生と云れたりとて。其の俊抜を歎ぜられたり。虎の音フウなり。

江戸時代支那学入門書解題集成3 p166
石崎又造『近世日本に於ける支那俗語文学史』p67
高橋昌彦「先哲叢談聚議1宇野明霞」(『雅俗』1号)
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2005年03月12日

唐音《たうゐん》(斎藤彦麻呂『傍廂』前編)

皇朝にて、改め直されたる漢音《かんをん》を、もとより外戎より伝へし韻《いん》なりと思ふは非なり。大学論語など、タイカク、リンギョとよむは漢音なり。ダイガク、ロンゴとよむは呉音なり。共に皇朝改正《くわうてうかいせい》の音なり。近き頃。加藤一周《かとういつしう》来りて語りけらく、安永九年五月、南京船《なんきんせん》安房国《あはのくに》千倉浜《ちくらのはま》に漂着のときに、江戸より藍田東亀年《あゐたとうきねん》といふ人行きて、唐人《たうじん》鄭岱《ていたい》といふ人に清音《しんおん》をとひしに、こたへて大《ダイ》学《ポツ》之《チ》道《ダウ》在《ザイ》明《ミン》明《ミン》徳《タイ》在《ザイ》新《チン》民《ミイン》在《ザイ》止《チイ》於《ヲヽ》至《チユイ》善《ゼヱン》云々といひしよし、游房筆話《いうばうひつわ》に見えたりとかたれり。我はいまだその筆話を見ず。一周《いつしう》はをさなき頃より我門弟なり。


随筆大成旧3-1
古事類苑 文学部 第二十七 外国語学
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2005年02月26日

〔玉勝間[二]〕五十連音をおらんだびとに唱へさせたる事

小篠大記御野といふ人は、石見国浜田の殿のじゆしやにて、おのが弟子(ヲシヘノコ)也、天明八年秋のころ、肥前ノ国の長崎に物して、於蘭陀人(オランダビト)のまうで来てあるに逢て、音韻の事どもを論じ、皇国の五十音の事をかたりて、そを其人にとなへさせて聞しに、和のくだりの音をば、みな上にうを帯て、ゐはういの如く、ゑはうえのごとく、をはうおのごとくに呼て、いえおとはひとしからず、よく分れたり、こは何をもて然るぞと問ヒしかば、はじめの和にならへば也とぞいへりける、かの国のつねの音も、このけぢめありとぞ、此事おのが字音かなづかひにいへると、全くあへりとて、いみしくよろこびおこせたりき、なほそのをりの物がたりども、何くれといひおこせたりし中に、おかしき事どもあれど、こゝにはもらしつ、



古事類苑 文学部二音韻 五十音)
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〔北辺随筆[初編三]〕音の存亡

又云【○富士谷成章、御杖父】、あがりての世には、人のこゑ五十ありけらし、そののちふたつは、やう/\うせて、あめつちの歌のころは、四十八になりぬ。それが又、ひとつうせたる世に、いろはの歌はいできたり、いろはの歌、四十七のうちに、今はよつうせて、四十四のみぞある。かくのごとく、音のうせゆくにしたがひて、かんなづかひといふ事いできにけり。かんな、女もじなどは、いふかひなき女わらはべまでも、心えやすく、もちひやすからんが為に設たるを、今は、かんなかく事だに、ならひあることのやうになりたるは、口にいふ所みだりがはしくなりて、かんなもじさだめたる世と、たがひたればなり。世うつりゆかば、四十四のうち、又ぞうせなむ。かくうせゆく事、こともじにはあらず。あ経、や経、わ経、【五十韻をば、亡父、経緯といへり。】このみつの十五音のうちなり。今は、あ経はみな残り、や経には、いえうせて三音あり。わ経には、わのみのこりて、ゐうゑを皆うせたり。いろはの歌の時、や経のいうせて、ゐふたつになり、わ経のううせて、あ経のうひとつになり、や経のえ、うせて、あ経のえ、わ経のゑふたつになり、あはせて三もじうしなはれたるも、世すでにくだりたればなり。今はまた、いろは歌の、ゐゑをともにうせたるがゆゑに、かんなづかひといふ事いでき。さてのちは、口舌にわかちたる物なりといふ事をもしらぬやうになりて、かんなをつかふ時に、さだむるもじのやうにおもへるがゆゑに、明魏は、さる歌くちの人におはしけれども、かんなづかひは、いるまじきよしいはれたるは、なげくべき事なり。たとへば、今いくよろづよをへて、やわあの三音、もじは、かはれども、こゑはうせてあとなり。をよの二字も、こゑうせたらん時も、明魏にしたがはヾ、いにしへをしたひ、ことをさだめむ人、なにゝよりてか言のこゝろをも、わきまへまし。ことの源をきはめずして、流にしたがひて末におもむく人は、明魏がひがごとをいひ出すべし。よくしらずばあるべからず。此みつをうしなへるのみならず、こゑの軽重をうしなへる事多きによりて、いよ/\仮名づかひの事、しげくなれり。軽重とは、はひふへほの、わゐうゑをにまがふ事なり。【御杖云、「はひふへほ」を、「わゐうゑを」の如くいふは、いはゆる清濁音也。】これらさへ、いにしへは、さだかに口舌にわかちたるを、となへうしなひて後は、かんなにてさだむることゝはなりにたり。いにしへ、神楽、催馬楽などをうたふが如くに、こひは、子火と聞えて、こゐとはいはず、あふも、安婦ときこえて、おうとはきこえざるべし。これらのまどひなかりけるゆゑに、いにしへは、いふかひなきわらはべ、もじかゝぬ女などの、口にまかせてよみたる歌も、かんなのたがひたる事はなかりき。今はいうそくの人だに、かんなづかひをまねびきはめざれば、たがふ事のおほきは、口にならはずして、書にならふが故なり。枕草紙に、えぬたきといふ人の名あり。かゝる名の、今のよにありて名のりたらば、えは、いづれのえぞと、とひ聞て後ならでは、かんなにも、女もじにはかゝるまじきを、その比は、やすらかに口にきこえたれば、疑なかりしなり。今の世の人の衍に、治右衛門あり。次右衛門あり。京人はたヾ同じやうによぶ故に、したしからぬ人は、消息などにもさだめかねて、次郎の次をつきたる人に、治部の治をかき、治右衛門に次右衛門とかきたがへてやれども、その人も、こと人かなともあやしまず。みづから次治などさだめてかきたるを、みしりたる人、はじめて疑なくなる事、わづらはしくも、荒涼にもおぼゆるを、筑紫人は、よく口にわけて、治はちもじの濁れる、次はしもじの濁れるなりと、よく聞ゆるは、げに筑紫は、みかどのもとつ御国なるしるしなるべし。和名抄に、諸国の郡名、郷名などをかけるに、かんなづかひたがひたるあり、これはその国々の詞だみて、いひうしなへるをみせたるなり。今の人もヽ都の詞、ひなの詞かはれる故に、いふ所、みな和名抄の郷名のたぐひになれり。かんなづかひは、京極黄門【○藤原定家】のさだめさせたまひて後、其沙汰まち/\にして、おぼつかなかりしを、ちかき世、契沖がよくいひわきまへたるにより、はじめてことさだまれゝど、いにしへより、理につきて、もじを定められし事とのみ心えられけるにや。口角にわかつべき事とはいへる人なし。千慮の一失といふべし。またあ経のお、わ経のををおきたがへ来れるを、わきまへたる人なし。今、紀伊、基肆のたぐひをもて、囎唹をおもひ、又、もじあまり反切のよしをおもひ、かつ催馬楽の譜などにも、をこそとのゝ列のもじを引声するに、乎々とはかゝずして、於々とのみかきたるにて、はじめてこれをさだむ。後の人よくみさだめよ。【御杖云、此「おを」の置所たがへる事も、また他家に同説ありとぞ、人の説をば、亡父かく書くべきやうなし。猶かのもじあまりの説なども、たヾものゝはしにかきつけ置て、今まで世にしめさヾりしかば、亡父が説とは、しれる人のなきなりけり。】木居を恋によせ、藍を逢によせたるは、もとより誤なれど、さすがに中古のひとの誤にて、いにしへのおもかげありて、よせたるこゐ、あゐ、みなゐなり。ゐは、かろく唇をうへの歯にあてゝいふ。ひの軽音もヽいにしへは、今のやうにまたくいとは聞えずして、唇を歯にあてゝ重くいひたるべければ、ゐをひにかよはせたるは、今の人のみだりがはしきには、いたくたがひて、しかるべき事なり。さればよゝの先達も、もちひられたり。これならずとも、ゐをひにはおしてもちふるも、心にくかるべし、といへり。

御杖因云、これらの説によりて、げに仮名づかひは、音をもてこそさだむべかりけれとさとりて、おのれわかゝりしより、経緯に心をいれて、おもひよれる事もあれど、こゝにはもらしつ。





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〔古史本辞経[一]〕五十音古図記第二

さて彼の荷田の家に傳はれる圖は、其古説の添たる上は、當昔の古圖にて伊以韋。宇于、延曳恵、於袁十音の位置も正し在けむを、破失せて。其あと少か存しは、最惜き事なるが、今慇懃に按ふに、略本和名抄の始に出されたる音圖決めて其古圖の類なるべく所思るなり【○註略】然るは其和名抄の巻首に出たる音圖の次第左の如くにて、悉曇また韻鏡の類にも都に合ざる横位なるを、其自序に、或漢語抄之文。或流俗人之説、先挙本文正説、各附出於其注、若本文未詳、則直撃辨色立成、楊氏漢語抄、新抄本草。日本紀私記、或挙類聚国史、万葉集、三代式等所用之假字云々とて。其餘の漢語抄をも廣く採たる由なると合せ考ふるに、當時漢語抄と稱せる古書あまた有りて、其は古事記の序に、本辭また勅語の舊辭など有る類の書にて。皇國言に漢字を填たる辭書なること、古史徴の開題記に論へる如なれば然る書等に舊く此圖の添ひて有しを、其隨にまづ巻首には出され在けむ、



古事類苑 文学部二音韻 五十音)
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〔語意考〕よつ 五十聯

五十聯【伊鬥良乃古惠と訓】

 阿       伊       宇      延       袁    本音

 加       幾       久      計       己    清濁二音

 佐       志       須      世       曽    同

 多       知       鬥      天       登    同

 奈       仁       奴      禰       乃    清音

 波       比       不      反       保    清濁二音

 麻       美       武      米       毛    清音

 也       伊       由      衣       與    同

 良       利       留      例       呂    半濁

 和       為       宇      惠       於    清音

 はじめのことば うごかぬことば うごくことば おふすることば たすくることば

 初       体       用      令       助



古事類苑 文学部二音韻 五十音)
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〔伊豆母廼美多麻初編序〕

あなうれたし、大日本の國には、元より字てふものなくして、漢土より伝へしより、其字をもてなに事も足らはせしなどおもふ人多かるは、くらきよりくらきに入ときごとにして、あげつらふにたらず、しかるにこたび伊豆母之美多麻てふ書を見るに、出雲大神大己貴命の伝へ給ひし五十連音の圖あなもじ三種の国字を得、そがをしへにもとづきて、言霊の幸はふまゝにかきとむる字の用格の古事を極めたる、いともたふときふみにぞありける、実にもこのときごとは丹靈【〇川北丹靈】があつき志によりてなれりし草案を、芬木うし【〇芬木元達】がまめなる心をもてかうがへ定めて、一たびかみつ世に埋れしことをおもひ、千とせの後、又埋れむことをおそれ、かく桜木にのせて、世にひろむるも、ことみたまの恩頼になも、かくばかりふるの中道たどたどしく、外國々のことのはぐさの茂る世に、この言霊の林の、神世も今も千萬の後も、かはらず、春霞かすみととみに繁りかをらむことのうれしさに、見るところを一言書そふるのみ

  文久二とせの霜月              松平源信幹誌



古事類苑 文学部二音韻 五十音)


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〔北辺随筆[初編一]〕経緯

経緯【五十韻をいふ、亡父(富士谷成章)つねにかくいはせたるなり】の本は悉曇家には阿字也、おのれおもふに、五十のこゑ、みな口をひらきて後きこゆ、口を閉ながらこゑあるは、ンなり、此ンのこゑ、さながら口をひらけばはじめたなり出るこゑは宇なり、こゝをもてみれば、他域の言はしらず、わが大御國にしては五十のこゑの本は宇なる事疑なし



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〔仮字の本末[下]〕片仮字

片仮字

さて音圖の阿行に於を屬たる。又竪行の、再の位荷、又横行の次第などの、中昔の書に見えて、今と差へるを、予【○伴信友】が見あたりたるを挙べし。まづ阿行に於を屬たるは、源順朝臣集にあいうえおを一音づゝ、初と終の句の上におきてよめる歌五首あり、また天丈丙午冩本の和名抄に、一本巻首云とて。五十音を書入たるにも、阿伊烏衣於、また和爲有恵遠と書き【こは順朝臣の草本などに記されたるにか、又後人の書入たるにか詳ならず】又管絃音義【文治元年の作】にも、阿伊宇衣於と書き、釋日本紀にも、阿伊宇江於之五音相通といへり【於は必阿行に屬ぺき由、既に鈴屋翁の字音仮字用格に論定られたるがごとくにてうごきなし、但し件の證件ある事をぱ、いまだ心づかれすして、然考定られたるが、おのづから古法に符合(カナヒ)たるにていとめでたし、○中略】

また竪行の音の位置の異なるは顕昭法橋の古今集注【文治元年著】袖中抄等に、五音相通の事をカケコクキの五音、ラレロルリの五音と云へる詞あり。但しカケコクキと云へるかたは、藤原教長卿の説の言としてもいヘリ、教長卿は。補任を案るに、久壽三年四十八歳と見えたれば、顕昭の世ざかりに、老人にてぞおはしけむ。さて此定にて讀ときは、阿行アエオウイなり、此餘も推て知るぺし。

さて古よリ傳れる楽家の譜に、ア行タ行ハ行ラ行の音を用ひて。イエアオウ。チテタトツ。ヒヘハホフ、リレラロルと定めて、物音の砥昂に配たるは、五音の軽重に随ひて、樂家の私に立たるにか、又五十連音みな其定に立たりしにもらやあらむ、但し上に挙たる管絃音義なるとは乖へり、】







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〔釈日本紀[五述義]〕

市杵島姫命【是居于遠瀛者也】

神名帳曰、安芸國佐伯郡伊都伎島神社【名神大】先師説云、案之、千與都者タチツテトノ同五音也、日本紀之例、同音之字通用然則宗像神三座之内市杵島姫命者安芸伊都岐島同体分身也



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〔袖中抄[二]〕はたすゝき

はたすゝき

 はたすゝきおばなさかふくくろきもてつくれるやどはよろづ代までに

顕昭云、はたすゝきとは花すゝき歟「た」と「な」と同ひびき也、さねかづらをさなかづらと云、はなかづらをはねかづらと云がごとし、それは「な」と「ね」と同五音也



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〔倭片仮字反切義解〕

倭片仮字反切義解加序

到2於天平勝宝年中1右丞相吉備真備公取b所v通2用于我邦1仮字四十五字a省2偏旁点画1作2片仮字抑四十字音響反2阿伊宇江乎五字1此乃天地自然之倭語焉,是故竪列2五字1横列2十字1加2入同音五字1為2五十字1且又横十字隨2唇舌牙歯喉1用2宮商角徴羽変宮変徴七声1哉,蓋世俗傳称v之云2吉備大臣倭片仮字反切1有2其口決1矣,然後弘仁天長年中,弘法大師釈空海造2四十七字伊呂波1【四十五字増補圍於二字】以便于女童1其体則草書,此伊勢物語,古今和歌集所v用女仮字四十七等是也,予学2和歌1楽2音律1其餘力観2吉備大臣倭片仮字反切1則闕無2音義1竊注2己意1亦考2全書1以解2片字1名曰2倭片仮字反切義解1聊述2由緒1冠仮字首1云爾【〇中略】

仮字反切口訣

 上父字行v竪,下母字行v横,其隅生2子字1

  例 伊(イ)上父 和(ワ)下母 反v阿(ア)隅子

  亦 也(ヤ)上父 宇(ウ)下母 反v勇(ユ)隅子

 横行帰父字竪行帰母字其帰生子字

  例 阿(ア)上父 和(ワ)下母 反v阿(ア) 子

  亦 也(ヤ)上父 勇(ユ)下母 反v勇(ユ)帰子(〇中略)

倭片仮字画解【[]内五字序所謂同音五字是也改乎伊作圍者空海所為焉】

 阿伊宇江乎 和      オ於  井囲勇惠與 奈仁奴禰乃 太知圖天止

 アイウエヲ ワ[イ][ウ][エ][ヲ] ヤ[イ]ユヱヨ ナニヌネノ タチツテト

 良利流礼呂 半比不遍保 末美牟名毛 加

 ラリルレロ ハヒフヘホ マミムメモ カキクケコ サシスセソ



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〔釈日本紀[二十三和歌]〕

以《エ》

得也、伊と江とは阿伊宇江於之五音相通而稱之、



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〔反音〕文字反

夫一字ニ借名之付事、三氣也。【取中】而以二字氣合一字成音名文字反、所謂麼莫下反。初字借名之中反字之下気叶氣□五音之中成一字初氣一分、後字氣多牙多分者合成一字以下氣音叶上氣用充也。必出氣不取昌之氣叶入氣取也、五音之中、氣□□取合シテ反之自餘如此又反有多種蓋可求尋哉、又反文字四聲并輕清等云者、平上去入者依下字輕重清濁依上字善々可思云々

五音云者

アイウエオ

カキクケコ タチツテト サシスセソ ハヒフヘホ ナニヌネノ

ヤイユエヨ ワヰウヱヲ ラリルレロ マミムメモ

注云 初言句者響聲次五句名五音、後四句者名對含聲

アカタサハナヤワラマ



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【参考文献】

赤堀又次郎『語学叢書』

山田孝雄『五十音図の歴史』
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〔天文本倭名類聚鈔[一]〕字切

字切

切與v反同。同音取2下字1、又一行之中、切2取下切

字1爲2正字1、軽重清濁依2上字1平上去入依2下字1、



羅利留禮呂  摩彌牟〓毛  阿伊烏衣於  可枳久計古  左之須世楚  多知津天都

那爾奴禰乃  波比不倍保  和焉有恵遠  夜以由江輿







古事類苑 文学部二音韻 五十音)



【参考文献】

平田篤胤『古史本辞経』

佐藤誠実「五十音考」


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