2004年10月18日

漢語の流行(『明治事物起原』人事部)

 明治維新後、日常の会話に、漢語を使ふことの大流行を見しは、奇なる現象なり。思ふに、これ維新の風雲に際会してにはかに擡頭せる官吏は、多く月落ち烏啼いて的書生畑より出でし人々であり、その人々の使用語が、優越語標準と認められ、それを真似るのが天下一般の維新色を発揮せしにあらざるか。明治維新と同時に、神道を唯一の尊奉すべき標的とせるにかかはらず、使用語のみが、際立ちて漢語の多くなりしは、かかる因果なるべし。

 漢語流行は、ほとんど維新と同時に始まり、戊辰五月発行『都鄙』第一号に、「此頃鴨東の芸妓少女に至る迄、専ら漢語を使ふことを好み霖雨に盆池の金魚が脱走し、火鉢が因循して居るなど、何の弁へもなく、言ひ合ふことゝなれり、……〓[魚條]に天誅を加へ、鮒に割腹させて、晩餐の周旋せん、閨中の事件は、我が関係せざる処なり、など、厨下の少女に嘲らるゝ、面白き時勢となれり、云々」とあれば、戊辰の夏すでに、京摂地方には漢語の流行せしことが明らかなり。

 同誌第二号にも、「仏蘭西人の話し、この頃、大政一新せる日本帝国の布令多くは支那の語を行ふが故に、民間に読む者甚だ少く、読んで其意を解せざる者、十人に八九人なりといふ」とあるとほり法令の文章、また漢語が多く、むつかしかりし。



    明治三年東京詞十首之一   大沼 枕山

  唱出(ス)楓橋夜泊(ノ)詩、三絃弾裏寄(ス)2相思(ヲ)1、

  誰(カ)図(ン)孤客愁眠(ノ)句、却(テ)上(ル)佳人艶絶(ノ)辞、



 漢語の流行は、一年ましに盛んになり、四年版『語一真』など、漢語まじりの都々逸に、俗解をつけし本まで出て、その他、用文章類には、みな漢語の二字を冠し、それと同時に、漢語の字引書類はいふも更なり。『漢語独字引』などいふ銅版摺りの扇子、または『増補漢語早見大全』類の番付が、いく種か出でたり。

 四年版『流行』の前頭に、「詩入のどゝ一」「たいこ持の漢語」「お酌人の唐しせん」等をあぐるに至る。『興廃』流行の部に、「唐詩入どゝ一」を出せしも、その盛んを想はる。

 明治十年三月版『盛衰』の中、盛の部の第三段に、「商人の漢語」の一項あり、同十六年十月版『賢愚』の賢い方に、「漢語使はずに、俗言で渡る商売人」、明治七年刊『寄合』に、「当時は漢語ばやりで、漢語で言はずともよい事を、わざ/\漢語でいふ事で、墨田川と言へば誰にも分るを、墨江墨水など、云ひ、花見に行かうといふを桜花遊覧散歩などゝ出かける」。いま番付『増補漢語早見大全』の中央部だけを左に留む。





            行司



         勉強 規則 注意



    関係   管轄   区別   周旋



開店発売 原告人 被告人 豈図乎 遊手徒食 四隣合壁 降伏謝罪



裁判   捕亡  器械  布告  運輸   一新   事件 



            惣後見



  因循  本月  探索  方今  廃止



    勘進元      差添人

    文明     悔悟

    開化     奮発







  漢語   声競

いひ過したはこちらの錯誤、うたがひ晴れたに、もう泣くな



  書生言葉 開都

松と云ふ字は開化のはじめ、公と木との女夫づれ

松と云ふ字は木へんに公よ、公がはなれりや木ひとり

大和言葉も開けて今は、漢語変りの君と僕





西戎東夷《せいじうとうい》と誹謗《そしろ》ろと何《なん》の私婦《わたし》が大切《だいじ》の好男子《いろをとこ》

はやし たでくふむしもすききらひ はれて らしゃめんになりたかろ





明治41年版にはこの記事なきか。



【参考文献】

池上禎造『漢語研究の構想』岩波書店
松村明(1958)「明治以後の日本語」 『講座現代国語学3ことばの変化』筑摩書房 松村(1977)に再録

松村明(1977)『近代の国語』桜楓社 p200 松村明(1958)を再録 (索引に石井研堂p119とあるは、p199の誤りなるべし)

土屋信一(2004) 『日本語学』増刊号

坪内祐三『文庫本を狙え!』晶文社(2000/11)p63
posted by 国語学者 at 18:54| Comment(0) | TrackBack(1) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

1932年04月18日

第十章 横濱言葉 第二節 横濱言葉の資料 二 成語の妙味

 以上の異人言葉や、其語類の一つーを舌に乘せて發音するときは、其變體的な語音が漫ろに浮び上つて來て、原語を偲ばせるに充分のものがある。茲に探取した語類は、發音を其儘に假名に寫した爲め、受入れ難い言葉もあると同時に、却つて又、眞に近い發音が寫されても居て、頗る興味多いものである。殊に語類の末尾に收録した成語は、開港場特に横濱に於て、最も盛に用ゐられたものであるから、從つて其成語の範圍も可成b多數でもある事は無論であるが、それと同時に、當意即妙に成語されて居るとごろから、其應用範圍も變轉極6ない爲めに、到底その全部を探録する事は至難である。

 成語の例としては、木に|棲《とま》つた二羽の鳩を「あれはなんだ」と外人に訊かれた時、「ツウ・ポツポ・キ・マテマテ」と答へたり、燈臺の説明に「舟はいき(け)ん、さらんぱん、ろうそく」と云つたり、靴修繕人を、くつ、ポンポン、マン」、寺院を,てんぽう・はあす」(天保ハウス)と云ふ等、小児に教ゆるやうな一種の外語混用の成語を以て突嗟の妙智を見せて居るものである。

 斯の如く外國人に對して説明的に意譯した異例な成語、即ち外國語と日本語とを交へて、甚しく不熟な而して面白い言葉が、口を衝いて出る時に、外國人も比較的容易に之を理解して、果ては外國人自身に於ても、日本語を主用したものに外國語を混合して、自らの創作的の言葉を以て、日本人に對するやうな有樣となり、その日本通を發揮して盛にやつたものである。是等を一つ一に味ふときは誠に滑稽を極め、洪笑を禁じ得ないものがある。斯く日本語を外國語化した發音で、綯交ぜの同胞間の談話や、さては異國人との商取引にも、口眞似に手眞似や動作をも添加した、所謂獨自な開港場の言葉を横濱言葉として極めて開發的な、さうして雜然とした開港當時の有樣や、其後に於ける状況に適はしい幼稚で、而かも眞劒な態度には、憫憐と微笑とを禁じ得ないものがあるのであつた。

 斯かる言葉を常用して、彼我互に其通を振り廻したところに、横濱内容の情緒を豊富にし、其輪廓を懷しく肥大し來つたものではあるが、何れもは世運の進展に隨ひ、其時流に伴はざる古き昔語りの珍奇語として殘り、數奇者にのみ取扱はるゝ悲しい運命に置かれては、明治中葉期から漸次に其面影を薄くし、爾後僅かに波止場の人力車夫や|ちやぶや《・・・・》の中などにのみ其姿を傳統し來つ

たが、現今に於ては殆ど消滅に近い有樣なのである。


posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第十章 横濱言葉 第二節 横濱言葉の資料 外国商通ことば附

   しよくもつのぶ

くいものふろうふいんめん?
あさめしぶれそきふれすとBreakfast
ひるめしじんねるDinner
ゆうめしそうぺるSupper
ぱんぶれーとBread
めしどきみーろMeal
たまごゑゝぐすEggs
うしにくびーふBeef
ぶたにくぼーるくPork
さかなひしFish
あおものうゑんでゑらるすVegetables
こなみーるMill
ここくこるんCorn
さとうしゆがるSugar
しほそーるとSalt
あぶらおわいるOil
せうちうぶらんでいBrandy
ちやていTea
そばぶれっき・いとBuckwheat
いもぼていとすPotatoes
にんじんけるろつッCarrot
かぼちやぼんげPunpkin
こんぶし・ういとSeaweed
まめびいんすBeans
こめらいすRice
大こんらでいRadish
けっぺッちCabbage
はだかむぎらゐRye
せりぺるせりひParsley
いんげんきっとねい.Kidneybean
ねぎおにをんすOnion
きうりこきむふるすCucumber
ゆりりれいLily
しいたけもしるうむすMushroom
かきふいっく(誤)Fig
もゝぴいちPeach
ぶどうがらぷすGrapes
なしぺーるPear
さかなふいしFish
たいぶりむBream
ぐじらうゑぐるWhale
まぐろほるぴす?
さめそるんぺつき?
ひらめふろうんどるFlounder
このしろへろりんぐ?
ゑびけれんしげんし?
こひけれぷCarp
たらこっどひしCodfish
うなぎいーるEel
かい【はまぐり あさり】しくろす
かきおいすにのるすOyster
かれいとんぎうひー?
す丶きはつとゞつく?
かますぱいき?
かにしゆるひしShellfish
かめのことるちすTortoise
posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第十章 横濱言葉 第二節 横濱言葉の資料 外国商通ことば附

   ことばのぶ

おゝきいらーぢLarge
ちいさいすもうるSmall
おゝしぷれーていPretty (誤)
すくなきり(り)つているLittle
おもきへっうゑHavy
かるきらいとLight
つよきすとろんぐStrong
よわきうゑーきWeak
たかきはいHigh
ひくきらうLow
よきことりっちRich
わるきぶーるPoor
かしこきわいすWise
おろかふーるFool
さいわいべつへいHappy
わざわいうんへーペいUnhappy
できるぽっしぶるPossible
できなしいむぽっしぶるImpossible
まことふゑーちぼるFaithful
まことなきおんふゑーぼるUnfaithful
つとむるでいり・けんDaily come ?
おこたるあいでるIdle
四かくすくゑいるSquare
まるろんどRound
ながきろんぐLong
みじかきしおるとShort
ますぐらいとRight
まがりくりげつとClinched
ひろきふろーどBroad
せまきねるろうNarrow
ふとりふあーとFat
やせりーんLean
わかきじよんぐYoung
としよりおるどOld
おごりぷらうとProud
うたがわしきどうとほるDoubtful
たゞしきせいてのをSaintly ?
こ丶ろよきゑぎいゑぶるAgreeable
こ丶ろわるきぢんゑきり?
あたきぢっひごるとDifficult
あまきすゑーとSweet
すきそーるSalt
にがきびーとるBitter
むまきでりしおうすDelicious
まぎらわしきいんういしぶるImmeasurable
あつきほつとHot
さむきこーるどCold
くろきぶれっきBlack
しろきほあいとWhite
すゝたけいろぶろんBrown
あをきぶりゆBlue
水いろぶろいんBlond ?
あかれっとRed
ねづみぐれGray
かばいろおるれんじOrange
きいろしゑろんYellow
いろ/\ぶありおすVarious
ゑきあるうっしお(ふ)るUseful?
みよしはんのそむHandsam ?
みにくしうぐれUgly
すきとうるてれんすぺりんとTransparent
くらきおびいきObscure
ほそながきおぶろんぐOblong
ひかりふ・らいゝとLight
うすきしんThin
あらきろふRough
たよりとってるLetter
むかしぶりゑんてき?
いまようもでるModern
さとりやすきせんしぶるSensible
さとりわるきもでる?
たへまなくぱふいーんと?
かわるなゑんぢぷるChangable
かわらぬおちゑんぢぶるUnchangable
このしなです・せんくThis thing
ねだんひけひっぐと・ゑぱうと・ぷらいすPicked about prise.
ひけませんあい・けんと・めゑき、ちいでねつうI can'nt make. T'is the net.
おかひなさいういる・ゆう・ばいWill you buy ?
いかほどひけますはう・ろうゑるHow lower ?
なさいづう・いッとDo it.
あげますあい・ぎぶ・ゆうI give you.
くだされきぶ・みひGive me.
もつてゆけかるれ・うCarry away.
かへるかむべ・つきCome back
あがるこうあつぶGo up
くだるこうだうんGo down
かんじやうゑつこうんとAccount
せんじつらすと・でいLast day
のこりれめいんすRemain
ふつていてすちうど?
とりやりとれうどTrade
のちほどばゑんぱへBy and by
どう%\(同道)ゑつこんべにひAccompany
うけとるれしひぶReceive
まことにこまるあい.あむ・うゑり・とろうふるI am very trouble
みせゑよぷShop
あきないとれゑとTrade
わたくしのいへにきたれかむ・まい・はうすCome my house.
かうじきでや・ぷらいすDear price
いそぎれいすRace
へんじお丶らいAll right
ねるすりいぷSleep
おきるげたつぷGet up
たつすてんとStand
すわるせつだんSit down
もちきたるぶりんぐBring
いやだのう/\No! no !
たゞいまじよすと・ならJust now
こんにちとでゑToday
さくじつゑすとるでゑYesterday
おとゝひでい・びほうる・ゑすとるでゑflay before yesterday
あしたとまるろうTomorrow
みようごにちでい・あふとる・とまろうDay after tomorrow
ねだんぷらいすPrice
いくらはまつちHow much
たかいでゑやDear
やすいちいぷCheap
わたくしあいI
あなたゆうYou
さようゑいすYes
ゑりぞけあゑーAway
おなじことお丶るせゐむAll same
のちほどとりう?
うけてふゑるす?
たくさんぶれんてPlenty
すこしりっとるLittle
ありがたうたんき・ようThank you.
すてるさらんぱん破壞の意、馬來語の轉訛to goの意義、端艇破損ボート、サランパン。
わるいぺけ
posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第十章 横濱言葉 第二節 横濱言葉の資料 外国商通ことば附

    外国商通ことば附 明治初年刊

  ばんもつのぶ

せかいうをるとWorld
てんへゑうゑんHeaven
ゑあるすEarth
そらふーるまんめんと
ひ日そんSun
つきむうんMoon
ほしすたるStar
あかるきちいとLight
くらきだあくDark
あつさはつとHot
さむきこをるとCold
かぜういんどWind
あめれいんRain
くもくろうどCloud
かみなりそんだあThunder
ゆきすのうSnow
てんきうゑーぞるWeather
こうりあいすTee
きりふをっぐFog
さむしきそう
あさもうねんMorning
ばんゐひうんゐんEvening
よるみいとNight
はるすぷりんぐSpring
なつさんまあSummer
あきおもやむんAutumn
ふゆろ(う)いんとるWinter
はじめべきんにんBeginning
おわりゑんどEnd
としゑぐやYear
ひとつきねきすともんす(誤)One month
らいげつらすともんす(誤)Last month
とんげつてすもんすThis month
つちいゑるちEarth
じしんいゑるちうくEarthsquake
ひ火ふえ(を)いるFire
けむりすもうくSmoke
ひるめーしNoon
ひるすぎあふとるめ(ぬ)ーんAfter noon
よなかみつとないとMidnight
ひがしゑいるEast
にしうゑすとWest
みなみづうちSouth
きたのるちNorth
うみしゐSea
みづうおゝとるWater
はまこうすとCoast
はとばちゑとChart
みなとはあぼをるharbor
やままおんていんMountain
ぬまめるー?
かりそうる?
くにあおんてりいCountry
いしすとおんStone
みやこせていCity
まちをとりいとStreet
むらびいれぢVillage
みかどゑむぶろるEmperor
やく人おふくするOfficer
ごろうちうこんしうるConsul
ふなおさあどみらるAdmiral
まちどしよりびゆるぐめする?
がくしやれゑと.めんLearned man
いしやふいしゝいんPhysician
ゑかきぺいんとるPainter
りようがいやばんけんBank
ひきやくやぽすとおついすPost office
あきうどもるちゃんとMarchant
だんなますとるMaster
ばんとうぶつきいとるBookkeeper
でつちぼういBoy
かるこほるどるHolder
めしたきこーくCook
せんどうべるくめんBulk men
日やとひてーれお丶ふな?
さかなやひしもんける?
ひけしはいる・めんFire men
つうじ(通詞)いんてゐふれっとるInterpreter
やくしやよてしぶれーるActor
げいしやふれゑ?
じようろううゝる?
なかまめでいしとる?
きやく人がすとGuest
たび人とれふれるTraveller
ぬすび人すてひれるStoleu
しんるいきんどるこKindred
ちゝふあざあFather
はゝもふざあMother
むすこぞんSon
むすめどろうとろDaughter
きやうだいぶろぞるBrother
あにゑるてるぶろさるElder brother
おと丶よんける・ぶろさるYounger brother
あねゑるとる・しすとる Elder sister
まごぐらんとそんGrand son
めんMen
おとこまんMan
おんなげへるGirl
こどもりつとる・ぽいLittle boy
あかごばびいBaby
としよりおうると・めんOld men
からだぼでい・Body
あたまへっどHead
かほふゑゝすFace
へんどhand
あしれぎLeg
こゝろひゆるとHeart
はないすNose
ゑいLye
くちもーつMouth
み丶いーるEar
つーつTooth
へゑるHair
ひげべゑどBeard
くびねっきNeck
はらべれBelly
いんきょうういりくてい?
いんもんうをんひ
ごうぎむるりめんどParliament
やしきへれーす
しろけゑるちCastle
いゑはうすHouse
かりやころすとCloset
いどそうるWell
しばいせあたあTheater
なりものこめでComedy
きものころーせハCloth
はおりめんとるMantle
かぶりものはっとHat
せとものぼつれんPocelain
ぎやまんがらすGlass
ゑのぐぺいんとるPaint
きんごうるGold
ぎん.しるうるSilver
かなものぶろんすBronze
てつあいろんIron
あかがねごーるとGold
ぞうげあいぼれivory
ふねしっぷShip
かいこするく・うおるんSilkworm
へびせるぺんとSerpent
かいるふりぐFlog
しらみろうすLice
のみふりうFlea
はいふらいFly
かやねつとNet
て(と)りいすTree
まつぱいんPine
さくらちゑるりいCherry
うめぷりゅむPlum
ざいもくてんぶるTimber
とりふるすFlush
つるくれいんClane
にはとりこつくCock
あひるじゆくDuck
がんぐうすGoose
すゞめすぼるろうSpallow
からすくろうCrow
とんび(紙鳶)かいとKite
うしかをCow
むまほらるすHorse
いぬどぐDog
ねこきやっとCat
ねづミまろうすMouse
生 いきらいふLive?
死 しにでーとDead
posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(2) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

横浜語類(横浜市史風俗篇)

つうじ通詞 通辯 通譯
遠行きぼおいガイド 案内人
たれまん陸揚荷物計算方 荷役
かん/\蟲艦船汽罐掃除夫
ぱいろパイロットPilot
めつて運轉士 チーフメット チーフメントMates
せらあ水夫 水兵Sailer
まどろす下級船員
ほこフォークFork
はおす家 屋敷House
はいけん拜見 檢査
かん/\看貫(見せろ) 量目
さんぱん通船Sampan
どああDoor
かんぷ かんぷさん會計監督
めと めとやメ・ット 女唐 女唐服(婦人服)
さしづソセージ
ベかあれパンヤBaker
こんしろコン四郎 岡士 領事Consul
うすけウィスキーWhisky
もんき もんけいMonkey
ぱいすけ石炭運搬用の笊 バスケット 籠Basket
わだウォーター  水Water
ちやチャー 椅子Chair
ちやんチャンピオン 選手
かずカード   トランプ
赤だら銀弗に對して
首だら首を鑄出した外國貨幤
變りだら異種の外國貨幤
ちやぶだら痘痕のある人 嘲罵の語
いんだら放慢 放逸 淫蕩 いんだら野郎
しすこ桑港
ぱんこば晩香坡
めりけん拳骨America
てんぽう寺天保はおす 耶蘇會堂Temple
かく(かくかく)受取書 證文
むすめ(むすめさん)洋妾(らしやめん)
りきしょ人力車夫
たべろ食事
すてんき・はおすステンクハウス 便所Stink house
さいとりさやとり ブローカー
くらばん倉庫係
きんこばん金庫係
かめ洋犬 そかめ カム・ヒヤの訛
がんがらびき港内碇舶の艦船から投棄する石炭・酒瓶・器具等の如き沈下物を鑵に似たるものに一種の裝置を施し、小船にて海底を渫取する職業
よいどん日曜の前夜 宵どん 土曜日
牛どん土晦日(日曜日の半分)
どんたく日曜日 呑氈(和蘭語のZondag)
たおタオルTowel
ばふバッス  浴室Bath
湯上り手拭……ばふたお
ちんChain
ちん/\兩替 チヱンヂChange
ばんたろパンタロン 聾
すとおストーブStove
ごおばいきゴー・バックGo back
かんばいきカン・バックCome back
びすけビスケットBiscuit
ばすけバスケット バケツBasket
ぐる・もーねんグッド・モーニングGood morning
ぐる・あふぬーんグッド・アフターヌーンGood afternoon
ぐるばいグットバイGoodbye
のー・ぐるノー・グッドNo good
ごっぷてえすお上りなさいGo upstairs
ご・なざ・はおすゴー・アナザー・ハウス(此室に入る勿れの義)Go another house
ゆう・ご あい・ごユー・ゴー アイ・ゴー(同行しよう)You go. I go.
かめ・ろんカム・エロング(同件し來れ)Come along
はり・やっぷハーレイ・アップ・ゴーヘイ(早く來い)Hurry up go ahead.
こうでみよう死んでしまへ
ばんばい・ごうへバイ・エンドバイ・ゴーヘイ(そろ/\急げ)
おす・まだ・ようウアット・イズ・ゼ・マター・ウィズ・ユー(何事だい) What is the matter with you?
ふあき・よせるフアック・ユーセルフ
さなかばんサン・オブ・ガン 鐵砲彈の忰(馬鹿野郎の意)Son of gun
posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第十章 横濱言葉 第二節 横濱言葉の資料 一 異國ことば(横浜市史風俗篇)2


花やフロウウル・マルケットFlower market
別莊コンテイリ・シトCountryseat
煙草やタバコ・シヨップ、Tobacco shop
桶やクルブルス・シヨップCuppers shop
鳥やプール・セレムBirds celler
八百やウルシテブルVegatable
せと物やポルセレーンPorcelain
朝食ブレッキ・ファストBreakfast
晝食デインネルDinner
タめしソップルSupper
ワインWine
牛のちぢケース(乾酪?)Cheese
干くわしスーイトSweet
砂とふシウゴルSugar
もちケイクCake
やき肴ロウスト・ブイシRoast fish
生ものロウRough
美味ナイス・テーストNice taste
テイTea
煮肴ボイルト・ブイシBoiled fish
スープSoup
きなこヒース・ミイルPeas meal
ウーデWood
からいシャープSharp
にるト・ホイルTo boil
やくト・ローストTo roast
そばブレキ・ホーイートBuckwheat
むまきものテイスド・フィルフード?
物をむすテイステユシ?
せんべいウヌウルWaffle
まついものウヌフル?
酢き物テイストTaste
しんSun
むんMoon
すたうるStar
くもくらうとCloud
あめれうんRain
ゆきすのうSnow
ういんどWind
あめふるをれうんはぶRain fall
雪ふるをすのうはぶSnow fall
ふることをはぶFall
じしんゑれすくいEarthquake
かみなりしんているThunder
さむらいかすとめんCastlemen
壽ぼうさんぶれうすごBuddhist
だんなほうのるHonour
ばんとうすとをるMaster
りやうり人こつくCook
ていしゆますとうるMaster
女房わいふWife
女郎げいろGirl
女郎買にゆくをまあろ/\
用ありてゆくをまあろ/\
めしくふをちやぶ/\
酒にようをどろんけんDrinker
おやじふあうざFather
はゝまざMather
ぢいさんげれうど・ふあうざGrandfather
ばあさんげれうど・まざGrandmather
あ にゑれですと・ぶろそるElder brother
おとうとよんげすと・ぶろそるYonnger brother
あねゑれですとしすたElder sister
子どもちやいるChild
ちのみ子すもるばつちSmall boy
男子そんSon
ひるをでいDay
よるをないたNight
火をふほやFire
みづおわたWater
ちやていTea
さとうしやうがあSugar
さけわいんWine
さかなふへしFish
たばこせがーCigar
きせるぽいぶPipe
くすりめりしんMedicine
やまいしつくねすSickness
女子どうたDaughter
ぺるそめんPerson
をうめんWomen
大きなものらちLarge
小さきものすもるSmall
ものやぶれたるをさらんぱん
やすみ日をどんたく(蘭語)Zondag
ねるをすれつぷSleep
をきるをげとうぷGet up
こん日をとすうでいToday
さく日をやすとでいYesterday
めう日をぐるでい(明に誤なり)Next day (Good day)
そうどくぽくすPocks
よこねぶろぼろうす
人しぬをしんたんち(死んだ人か)
うまれるをとうひうるTo full
できもの、きりきずをさらんぱん
大ぶねしぶShip
小ぶねぼうとBoat
てんま舟ばあていら
うみしえSea
りゑういRiver
いしびやけんのをんCannon
大つつぐれと・ごんGreat gun
てつぼうごんGun
かたなそうSword
はものないふKnife
きものげろうすCloth
いくさをぽんぽん
うちはうすHouse
どぞうごたんGo down
てらちやあぢChurch
ほとけぶたんBuddha
はかとむTomb
女郎屋げいるはうすGirl house
とまりやほているはうすHotel house
だいじんりつちRich
びんぼうぶうあPoor
もらうことをかみしよCommission
ものくれるをかみしよよろCommissioned
くれぬをかみしよ・なCommission not
もらうたるをたんきよThank you
ものすてるをぺけPeke
人をかいすをぺけ
じやまになるをぺけ
ひさしふりであふたるをぐるもうねんGood morning
小べんぴすPiss
大べんてれつき
男女よきことをふわつかFuck
うりかいはだんをぺけ
きにいりたるをよか/\No ! No !
きにいらぬをぺけNo! No !
人をぶつをぽんこつ
あやまるをのう/\く
よせといふをのうー
にはとりちいけんChicken
たまごゑいきすEggs
うまほうすHorse
うしべふBull
いぬどうけDog
ねこけつとCat
きたないをでうていDurty
きれいをきりいんCleaning


   ものかづかんじやう

一 わん   二 とう   三 つれい   四 ほう

五 ふあい    六 せきす    七 せぶん    八 ゑい

九 ない    十 てん



   天保せんかんじやう

      とうじん小ぜにはつかわぬ なんきん人つかひ

天保百文わん天保
二百文とう天保
三百文つれい天保
四百文ほう天保
五官文ふあい天保
六百文せきす天保
七百文せぶん天保
八百文ゑい天保
九百文ない天保
壹貫文てん天保


   金かんじやう

金一朱こわら一分Quater
金二朱はふ二分half
金三朱つれこわら一分
金一分わん一分
金一分一朱わん一分こわら
金一分二朱わん一分はふ
金一分三朱わん一分つれこわら
金二分とう一分
金二分一朱とう一分こわら
金二分二朱とう一分はふ
金二分三朱とう一分つれこわら
金三分つれ一分
金三分一朱つれ一分こわら
金三分二朱つれ一分はふ
金三分三朱つれ一分つれこわら
金壹兩はう一分
兩がいするをちん/\Change
貫日みるをかんかんCount
ねだんきくをは・まちhow much
ねだんたかいをでいやDear
ねだんやすいをちいふCheep
まかすことをおけびやうろ
posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第十章 横濱言葉 第二節 横濱言葉の資料 一 異國ことば(横浜市史風俗篇)1

 前述の如き經過に置かれて傳統され來つた横濱言葉の考察に資するためには、「横濱みやげ」【元治元年七月刊、横濱港崎町伊勢屋幸吉版。】と言ふ小册子の卷尾に記された異國言葉の全部と、「外國商通、異國ことば附」【明治初年刊、野毛町佐野屋富五郎版。】の語彙全部を轉載收録し、併せて茲に新に探收したる若干の横濱語類を添加して、横濱言葉全面の消息と、其姿とを充分に窺ふ事の出來る資料としたい。但し前記二書と其語彙に重出のものがあり、後者は數年後に發行されて、而かも其原語に對しては、日本製造語の稍々改正されたもの、及び新語をより多く加へてある。之を對照し翫味するときは、其間の幾何かの進歩の過程を物語つて居る様がよく見える。



    異國ことば 元治元年七月刊


おもふとう・しーんTo think
なくとう・からいTo cry
うたがうとう・どうとTo doubt
教るうら・いんすてゆりにくとTo instruct
物書とう・らいとTo write
返すとう・あんするTo answer
おくるとう・りーぶTo leave
うたとう・しんぷTo sing
とう・あすくTo ask
見出すうら・ていすとTo taste
だますトロデスブTo deceive
うら・てーきTo take
とう・いんてるTo inter
よむとう・りーぶTo read
いやしむとう・でいす(すはいす)To despise
角力取とう・れすしるTo wrestle
洗ふとう・れうんTo launder
敬ふとう・ほのるTo honour
舞ふとう・たんすTo dance
順ふとう・おびてい(だんご)To obey
しかるとう・ちーとTo chide
物をこうトウ・バイTo buy
道にて逢ふとう・みーとTo meet
よぶとう・こーるTo call
きやう頃日とう・りうおーると?
のゝしるとう・りぶろーちTo reproach
とふらふとう・べいぬふいーつとTo benefit
相談とう・いどわいすTo advice
求るとう・しーきTo seek
はつかしむるトウ・コンコーントTo commit
返すトウ・レテユルンTo return
見るトウ・ファインドTo found
約束トウ・プロミトTo promise
物を刻むトウ・ヒユウTo fine (?)
送るトウ・セントTo send
ト・テーキ・ヱウェTo take away
トウビーTo be
添るトウ・イットTo add
たもつトウ・キープTo keep
のこぎりトウ・ソウTo saw
いゆるトウ・レコウルTo recover
トウ・コットTo cut
助るトウ・ヘルプTo help
ろうかバスセイジPassage
居間インニル・ロームInner room
薄くトウ・シンTo thin
あざけるトウ・レデイックルTo deride
洗清るトウ・キリーンTo clean
害を爲すトゥ・インジュルTo injure
帆かけるトウ・セールTo sail
洗ふトウ・ワスTo wash
物を賣るトウ・セルTo sale
ゆあみするトウ・ベースTo bath
着岸トウ・レンドTo land
ものをにるトウ・ホイルTo boil
ゲートGate
シヤップShop
調合トウ・ミックスTo mix
なぐさむるトウ・コンフォルトTo comfort
返事トウ・ヲーライTo allright
分別トウ・コンサイトルTo consider
いゆるトウ・レコールTo recall
あたへるトウケンTaken
つかれるトウ・メッデイル
心にあたるトウ・ブリースTo breast
ホウスHouse
王殿キングス・ホウスKing's house
酒やワイン・マルケットWine market
藥 やメハセン・シヤプMedicine shop
二 階ストーリStory
さんじきゲスト・ルームGuest room
金藏テレジェリーTreasury
べ・バスルームThe bathroom
馬屋ステーブルStable
馬場レース・コテントRace court
もの書場リブレウー?
武具藏アルモリーArmoury
かし店ハイル・ハウスHire house
砂とうやシウゴル・ハウスSugar house
古ぎやレキ・マルケットLakemarket ?
ぱんブレーデBread
やらいベルリセイドPalisade
鳩小やドウ・ハウスDove house
せつゐんホァゥト・ハウスWhite house
屋根ルーフRoof
たゝみメイッMat
染物ダイ・ハウスDye house
魚店ブイス・マルケットFish market
ギヤマンヤガラス・ショプGlass shop
旅籠やホウテルHotel
麥のこベルリー・ミイトルBarley meal
にかいビットルBitter
鹽からサウル・テイスSalt taste
本やブッケ・セルレルBook eeller
餅やウイフレス・ショップWafer shop




つづく
posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第十章 横濱言葉 第一節 横濱言葉の意義(横浜市史風俗篇)

 一 其本質

 総ての言語には、発生・発達・変化・消長の四段過程ある事が、言語学上の説明に俟つ迄もなく、皆其実際の事実が、之を雄辯に証明するところであるが其地的環境と生活状態の交錯とによつて、特種の発生を見た方言などに於ても、自然社会の推移と文化の消長とにつれて、著しい変化消長を来すことあるのは言ふ迄もない。之を時間的に云へば、明治初年の言葉が、明治晩年の言葉となり、更に大正時代乃至昭和時代の言葉となつて、其変遷の中に著しいものがあるのである。

 我が郷土、横浜に特有する方言は、我国の方言分布中の関東語に属するものであつて、特り横浜が有する特異なる言語では無いが、一般的には古くから江戸言葉であり、又近くは東京言葉でもあつたのであるが、同じ軌道の上に置かれた言葉が、一は横浜方言として存続し、一は東京方言として残続して来たものである。併し其本質や発生・発達の過程、並に其内容に於ては、全く其範疇を異にして、夫々特異の言語を形成し、一種の方言となり済ました著しいものもあるのである。所謂、横浜言葉は開港の初から其存在価値を発揮し、其権輿を誇つて来たものなのである。

 横浜の開港は、我国の有らゆる事物の上に目眩ぐるしい進歩と発展とを促がしたものであつて、其開発に伴ふ風俗慣習は、著しく欧米の風潮に傾いたことは当然であつて、従つて言語の如きも、是等の影響に餘儀なくされた結果は、其所に独自な所謂「横浜言葉」と言ふべきものが生れたのが、極めて自然の帰著であつた。則ち渡来の異国人の口から邦人の耳へ、邦人の口から異国人の耳への其聴覚え的な不熟言語が、彼我の間に常に交換されたのであつて、これに依つて形成された横浜言葉の本質的な基礎とも言ふべきものは、外国語であり、即ち開港後に外国語の普及されたことは、日本人同志の会話や乃至其文章の上にも、幾多の外国語を混合せしむるに至り、其結果は、邦入下層者の耳にも是等が消化され、邦語化されて、遂には外国語を母語とする所の帰化語が沢山に発生したものなのである。此邦語化された外国語を、異国人には却つて横浜言葉として能く之を咀嚼されて、彼等自身の間にも極めて自然に、何等の不思議も無く、是等が受入れられたので斯くして其声音や語音乃至抑揚などからする、習ふより慣れろから醸出され、巧みに成育されて、茲に立派に邦語化された一種独立の言葉が発生したのであつた。是等の半化好通の特異な異国言葉を日常に交はして、彼我の間には勿論、横浜在住の人々の間には、通例の会話として用ゐらる丶に至つたのである。則ち横浜言葉は舶来の言葉でもあり、又其転訛でもあると同時に、日本人の製造語ではある。此和製外国語は、現在も猶盛に各所に、横浜人は日常の談話の中に織込んで、巧みに面白く其慣用語として伝統し来つたもので、又実に懐しい過去を物語る好箇の金字塔とは為つて居るのである。



二 転訛語



 横浜言葉は外国語の摸倣と其転訛したものであつて、其外国語から生れたものとしても、其内容は極めて複雑な関係から、和蘭語や、仏蘭西語や、若干の支那語等をも交へ、其大部分は亜米利加乃至英吉利の訛りなのであるが、本来は開国当時の締盟各国の言語の交錯なのである。

 当初に是等の外国語が邦人の耳に入つて、次いで変体的な口調を以て摸擬し、発音され、更に仮名文字となつて、日本字に註釈されるので、其所に変化を起し、之を「外国商通ことばずけ」或は「異人言葉附」などと題し、折本又は冊子などに仕立てられて版行され、横浜の地元錦絵店等から、横文字早学び書として、外国語の稽古本とか、通俗な学習書とかの目的の下に発兌されたものを、唯一の玉手箱・虎の巻の大評判の上に、これに就いて熱心に学得したものなのであるから、固より不完全のものであつた。かくて明治に入り、外国人と接触の一番多い人力車夫や、異人屋敷出入の者達【屋敷者。】に依つて、学習書の規定や約束もなく、自然に且つ順調に、不変則ながらの発達を来たし、殊に波止揚稼ぎの人力車夫などは、マドロス【外国船の下級水夫】を相手に最も能く其外国語を聞き分け且つ応答する新知識者であつたので、自然横浜言葉は比較的下層生活を営むリキシャマン語であり、らしやめん語であり、マドロス語であり、総括的には波止揚語でもあつたのである。

 斯の如く開港期から明治期に入り、更に今日に至る迄の外国語の転訛して、其原形を保つて居る言葉は可成り多数に上り、最も大胆に臆面もなく外来語を陶冶転訛し豊富に成育し来つたものであつて、実に横浜語は、文化史上の一過程に於ける研究資料としては重要の価値を保持し、誠に興味津々たるものが存するのである。





画像
posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(3) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

1901年10月01日

島村抱月「言文一致の現在、未来」

▲である といふ言葉は、確かに此派の先輩紅葉君が用ひ出した筈である。これは「江戸言葉」でない、外国語の翻訳言葉で、昔は「横浜言葉」と云つたものである。江戸では、での次へあを発音するやうな迂濶な言葉を用ひないのだ。それゆゑ初め美妙君などはですと云つてゐた筈である。けれども一方から考へて見ると、迂濶であるだけ、それだけ悠長で、どんな烈しい場合にも、此言葉を用ゐてゐれば、綿々として餘裕のあるやうに思はれる。つまり度量の宏大を示すものと云つても宜しい。それにだと謂へば、独りで気焔を吐くやうに、つまり生意気に当り、ありますとか、ですとか云へば強き意味が含まれないゆゑ。其中間を求むれば、であるが一番よいやうに思はれる。然しこれは永く続くものではない、早晩必ず磨滅して仕舞ふだらう。



明治34.10.1「新文」16

山本正秀『近代文体形成資料 成立編』桜楓社 p404406



【参考文献】

山本正秀 『言文一致の歴史論考』222頁

杉本つとむ(1996)『江戸の文苑と文章学』


posted by 国語学者 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月24日

明治一八年六月三〇日「自由燈」社説、朝寝坊氏「東京語の通用」

扨(さ)て近頃(ちかごろ)は、假名(かな)の會(くゎい)又(また)は羅馬字會(ろうまじくゎい)などいふものが出來(でき)て、和學者(わがくしゃ) や洋學者(やうがくしゃ)の御連中(ごれんぢう)が御騷(おさわ)ぎなされる調子(てうし)に乘地(のりぢ)の彌次馬書生(やじうましょせい)も澤山(たくさん)に飛(と)び出(だ)しますが、愚坊(ぐぼう)も負(ま)けぬ氣(き)で一番(.ばん)何(なに)か語學(ごがく)の議論(ぎろん)を擔(かつ) ぎ出(だ)しますべい。先(ま)づ文字上(もんじゝゃう)の便不便(べんふべん)を吟味(ぎんみ)するより、差(さ)しづめ日常通用(にちじゃうつうよう)の日本語(にほんご)のうちにて、何(いづ)れの地方(ちほう)の言葉(ことば)が廣(ひろ)く通用(つうよう)するであらうと申(まを)さば、愚坊 (ぐばう)は即(すなは)ち東亰語(とうきゃうご)なりと答(こた)へます。

昔(むか)し諸大名(しょだいみゃう)が參勤交代(さんきんかうたい)の世界(せかい)に、西國(さいこく)の大名(だいみゃう)と東國(とうごく)の大名(だいみゃう)と縁組(えんぐみ)の相談(さうだん)ある節(せつ)には、互(たがひ)の言葉(ことば)が分(わか)らぬので、必(かなら)ず謠本(うたひぼん)の候言葉(.ことば)を使(つか)ふて用(よう)を辨(べん)じたといふ話(はなし)も聞(き)きしことあれども、王政維新(わうせいゐしん) の前(まへ)よりして、久(ひさ)しく封建(ほうけん)の關所(せきしょ)に閉(と)ぢられし國訛(くになま)りの片言葉(かたことば)も、有志(いうし)の交際(かうさい)が盛(さか)んになるに從(したが)ひて、君(きみ)や僕(ぼく)の書生言葉(しょせいことば)となり、其後(そのご)廢藩置縣 (はいはんちけん)となるの後(のち)に至(いた)りては、孰(いづ)れも輦轂(れんこく)の下(もと)へ我(わ)れ先(さ)きにと出掛(でか)けしより、何日(いつ)の間(ま)にか、東亰言葉(とうきゃうことば)を使(つか)ふ樣(やう)になりゆきたるのもならず、昔(むかし)は爲永派(ためながは) の人情本(にんじゃうぼん)にて讀(よ)み覺(おぼ)えし東京言葉(とうきゃうことば)も、今(いま)は傍訓新聞(ふりがなしんぶん)にて讀(よ)み覺 (おぼ)ゆる十分(.ぶん)の便利(べんり)があるから、生意氣(なまいき)な諸生(しょせい)は未(いま)だ東亰(とうきゃう)へ足踏(あしぶ)みをしない時(とき)よりして自(みづ)から東亰言葉(とうきゃうことば)を使(つか)ふ者(もの)がある位(くらゐ)にて、

又(また)三菱(みつびし)共同(きょうどう)兩會社(りゃうくゎいしゃ)の汽船(きせん)が毎日(まいにち)の徃復(わうふく)に、ます/\東亰(とうきゃう)の風俗(ふうぞく)を地方(ちはう)へ輸入(しゅにふ)するの便利(べんり)を増(ま)したるなど、是(こ)れ皆(みな)東亰語(とうきゃうご) の津々浦々(つゝうら/\)まで滯(とゞこふ)りなく通用(つうよう)する原因(げんいん)と、オホン、此(こ)の愚坊(ぐばう)が自分免許(じぶんめんきょ)の現在社會學(げんざいしゃくゎいがく)で判決(はんけつ)致(いた)しました。又(また)愚坊(ぐばう)が曾(かつ)て承(うけたまは)る所(ところ)に據(よ)れば流石(さすが)に英語(えいご)は世界中(せかいちう)の開港場(かいかうば)に通用(つうよう)するゆゑ、這囘(こたび)文部省 (もんぶしゃう)にても之(これ)を小學校(せうがくかう)の課程中(くゎていちう)に加(くは)へられたとか申(まを)すこと。然(さ)れば地方(ちはう)の小學校(せうがくかう)にて東亰語(とうきゃうご)を課程(くゎてい)にするまでになくとも、せめて教師達(けうしたち)が、口授(こうじゅ)するにも、話(はな)しするにも成丈(なるたけ)東亰語(とうきゃうご)を用(もち)ひて各地方(かくちはう)の言葉(ことば)をば悉皆(しっかい)東亰語 (とうきゃうご)にしてしまひたいもの。

是(こ)れと申(まを)すも我(わ)が日本(にっぽん)近體(きんたい)の文章(ぶんしゃう)は、言語(げんご)と文字(もんじ)と甚(はなはだ)だしき區別(くべつ)なき西洋文章(せいやうぶんしゃう)に類似(るゐじ)する傾(かたむ)きを持(も)つは諸君(しょくん)の已(すで)に承知(しょうち)せらるゝ所(ところ)なれば、通俗(つうぞく)の文章(ぶんしゃう)を一定(.てい)する爲(た)めには先(ま)づ言葉(ことば)から一定(.てい)し置 (を)かずては成(な)りますまい。抑(そ)も東亰語(とうきゃうご)は一種(.しゅ)活溌(くゎっぱつ)明白(めいはく)の調子(てうし)ありて尤 (もっと)も人(ひと)を感動(かんどう)するの勢力(せいりょく)あれど、中(なか)に就(つ)き下等社會(かとうしゃくゎい)の言葉(ことば)にはチト御免(ごめん)を蒙(かふむ)りたいものもあれば、是等(これら)の訛(なま)りを改正(かいせい)する爲(た)め新(あらた)に東亰語學會(とうきゃうごがくゝゎい)を起(おこ)されては如何(いかゞ)です。斯(か)く申(まを)す愚坊(ぐばう)とて東亰語(とうきゃうご)は未(いま)だ十分(.ぶん)に使(つか)ふことの叶(かな)はぬ上方(かみがた)よりもズート遠國(をんごく)の田印(たじるし)なれど、以上(いじゃう)の意見(いけん)は愚坊(ぐばう)が平生(へいぜい)の實驗(じっけん)を一寸(ちょっと)御參考(ごさんかう)まで述(の)べてをきます。

(山本正秀氏編『近代文体形成史料集成 発生編』 昭和五三年 桜楓社 二二四頁の影印による)



【参考文献】

山本正秀(1965)『近代文体発生の史的研究』岩波書店

山本正秀(1978)「わたしの言文一致運動研究史」専修国文22 (越智治雄氏の教示によるとの記事)

松井利彦「書生のことばの展開」国語学 154 (p.5465)

田中章夫(1983)『東京語 その成立と展開』明治書院

真田信治(1987)『標準語の成立事情』PHP新書 p95

岡島昭浩(1996)「武家共通語と謡曲」『雅俗』3
posted by 国語学者 at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月24日

岡三慶『今昔較』明治九年「言語」

     言語

國制の事を以て熟《つら/\》考ひみれば、蓋古へ郡縣の世には、六十餘州の内佐渡對馬等の島々を除くの外、内地は都て郷音《くになまり》少し宛の違はあるべけれども、言語は大略一樣にてありしなるべし。其故如何となれは、割據の時封建の時等に於ては、各自險に據り國を建て、關を置て嚴に他州人の出入を禁する故、常に隣州《りんこく》の人と言語を接する事寡く、唯其|州人《こくじん》と斗り互に語り合ふを以て、始隣州と同しかりし辭も、年を經るに隨ひ知らす/\變化し、數百年の後に至ては、語脉辭態全く同しからさる樣になるは必然の勢也。是と云も我邦には西洋各國の如く、聢と定れる語學【西洋にても 古は語學聢と定まらざりしに漸文明の今となりては 言語の則 全定まりしとぞ。】と云者なきを以て、其時/\に流行辭出來るに隨ひ、舊詞は新辭と次第/\に移行き其極を知らざる故也。假令て言へは、近年|異人調《いじんてう》【異人調とは、近来異国人、日本語を習ひ覚へて、頗る巧みに使ふと雖、自然其調同しからす、故に仮に異人調と号す】並に漢語、追々に世間に流行するより、今は言詞頗る変化し、旧語は次第に世に疎せらる。

然れども年高の者は、是は舊語、是は新辭と、盡く其別を知て、新舊の差別なく用に適して絶へて指支へなけれども、今より成長する者は、只新語斗りぞ習ふて、舊語は悉く習ふと云ふにあらざる故、數十年の後には、今の[舊語は悉く習ふと云ふにあらざる故、數十年の後には、今の]舊語なる者は、盡く古語の樣になり、竟には註脚を下さゞれは解《げ》す能はざる者多かるべきに至ると一般の道理也。かゝる變化し易き道理に就て、古の事を熟考すれは、古郡縣の時一樣なりし辭も、割據封建の年を經の久敷、各自國々の辭勢語路自然に變し、一種の郷音の樣になり、甚敷違ひを起せしなるへし。然るに今の如く郡縣となり、關もなく國境もなく、六十餘州の人一家の人の如く、親く交りて差別なき時となりては、是は我國詞也と人に對して己の郷音を誇れとも、天下の人其國詞を知らさるを以て、萬事不通なる故、餘義なく己の國詞を舍て、天下一般に通し易き辭を早く學んて用を辨するは、是亦人情の常にして必然の勢也。此必然の勢に因て六十餘州の人盡く從前の國詞を捨て、競て天下に通し易き辭を學んで止ざる時は、予多年ならずして日本國中の辭必一に歸するを知る也。夫言語は、畢竟人の意を通し事を辨するの道具故、雅俗の辨は姑く舍て、普通を以て專一となすベし。如何となれは、大和詞は雅なれとも、試に天下の人に對し、大和詞を使ふ時は、百人の中一二人も解し得る者は無かるへく、江戸辭を使へは、大抵百人百なから解するを得へし。余故に曰普通を專一とすと。且夫歐州の内にて佛語は雅にして英語は俗なれとも、英語は世界中に廣く通するを以て、歐州の人交易の爲に他洲へ出帆せんとするや、必先英語を學んて而る後啓行すと云へり。是に依り是を言へは、詞は雅なるより普通を以て專一とするは世界一般の事也。因て憶ふに、所謂江戸詞の日本に於る、猶英語の世界に廣く通する如く六十餘州に普く通し易き也。其故如何なる譯と言へは、東京開都以來、殆三百年の間、大小名の藩士、代る/\來りて在勤し、且日本第一の都會なるを以て、六十餘州の人代る/\東京に出て、或は貿易をなし、或は見物す。是を以て江戸詞を廣く八々州に通する也。かく八々州に廣く通ずる江戸詞故、今にては日本の普通詞となるを以て、六十餘州の人の言語、次第/\に江戸詞の一に歸するの勢あり。かく一に歸《き》する勢ある故に、方今は昔の樣に人の語音を聞て、其人の生國を的知《あてる》と云様成事は、絶《たへ》て出來ぬ也。【六十余州の言語一に歸するは 尤も肝要のことにして 學者の尤も喜ぶべきの一事也。故に前回と參攻して 封建那縣の是非をよく/\決し玉ふべし。】



(『明治文化全集』風俗編)



【参考文献】

松村明(1962)「江戸語が共通語となるまで」『解釈と鑑賞』272 松村明(1977)に再録

松村明(1977)『近代の国語』桜楓社 p100

杉本つとむ(1988)『東京語の歴史』中公新書 p260

古田東朔(1969)「国語ということば」解釈157

真田信治(1987)『標準語の成立事情』PHP新書 p67

飛田良文(1992)『東京語成立史の研究』東京堂出版
posted by 国語学者 at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月24日

横浜語(仮名垣魯文『西洋道中膝栗毛』)

○俗間《ぞくかん》横浜語《よこはまことば》と号《とな》へ、「あなた」「おはやう」「わたくし」「たいさん」「よろしい」「まはろ/\」などいへる。こは洋人《ようじん》と贈答《ざうたう》の階梯《かいてい》にして、内外《ないぐわい》必用 《ひつよう》の語なれば、本文中《ほんもんちう》専《もつぱら》に用ひたり。甘口《あまくち》なること、推《をし》て知るべし。

(岩波文庫・上巻 p.237238)
posted by 国語学者 at 16:46| Comment(1) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月24日

慶應第四年戊辰夏五月『都鄙新聞』第二

仏蘭西人の話の釈文大坂より来状抜書 ○この頃、大政一新せる日本帝国の布令多くは支那の語を用ゆるが故に、民間に読む者甚少く、読て其意を解せざる者、十人に八九人なりと云。これ文学技芸の教育ゆきとゞかざる故なるべし。各国文明の開けし折柄、如此き闇昧の土地は世界中にまれなりと思へり。各里各村に於て小学校を建てざるべからずと云。

(原文は片仮名)



【参考文献】

中山泰昌(1934)『新聞集成明治編年史1』p78




posted by 国語学者 at 16:46| Comment(0) | TrackBack(2) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月24日

慶應第四年戊辰夏五月『都鄙新聞』第一

此頃《このころ》鴨東《かはひがし》の芸妓《げいこ》|少女《まひこ》に至る迄、専ら漢語《からことば》を使ふことを好み霖雨に盆池の金魚が脱走し、火鉢が因循《いんじゅん》してゐるなど、何のわきまへもなく、いひ合ふこととなれり。又は客に逢って、此間の金策の事件に付建白の御返答なきは如何が、など実に聞に堪へざること也。鴨西漁隠曰、己若かりし比は近国近在富農の娘を京奉公に出すは、給金に不拘、行儀言詞のやさしきを習ふが為め也。糊《のり》を「のもじ」と呼び、葱《ねぎ》を「ねもじ」といひ、「かちん」をはやしてを「むし」にて烹るなど如何にも皇都《みやこ》の優なる詞《ことば》なるを、〓[魚條]《どじょう》に天誅を加へ、鮒に割腹させて、晩餐の周旋せん、閨中の事件は、我が関係せざる所なり、など、厨下《だいどこ》の少婢《しろは》に嘲らるゝ、面白き時勢となれりと云々

(原文は片仮名・「」は傍線)



『幕末明治新聞全集』第5巻 p7475



【参考文献】

中山泰昌(1934)『新聞集成明治編年史1』p78

日置昌一(1950)『話の大事典 第1巻』万里閣 昭25.12.10 p355

岩淵悦太郎(1952)「明治の自由学校」 『言語生活』 昭27・1 68ペ (未確認)

日置昌一(1952)『ものしり事典 言語篇』河出書房 昭27.10.15 p73

池上禎造(1957)「漢語流行の一時期」(『国語国文』)『漢語研究の構想』

寿岳章子(1960)『現代のことば』三一新書 第1章 p2324

池上禎造(1974)「日本における漢字」(『アジア文化』112)『漢語研究の構想』

松井利彦(1977)「漢語辞書の展開―『布令字弁弐篇』と『未味字解漢語都々逸』の成立をめぐって―」 『京都教育大学国文学会誌』 13

飛田良文(1992)『東京語成立史の研究』東京堂出版 p430

樺島忠夫(1981)『日本語はどう変わるか』岩波新書 p3

『日本語百科事典』p453

小島憲之『日本文学における漢語表現』

『日本を知る小事典2ことばと表現』現代教養文庫

『講座国語史・語彙史』大修館書店 p361

佐竹昭広「和語と漢語」

米川明彦『新語と流行語』南雲堂

『漢字講座10』明治書院 p141

木村秀次(1994)『研究資料漢文学10』明治書院 p262

進藤咲子「漢語サ変動詞の語彙からみた江戸語と東京語」国語学 054


posted by 国語学者 at 16:46| Comment(0) | TrackBack(2) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月24日

式亭三馬『狂言田舎操』文化八年(一八一一年)巻上「でく蔵」

ハテ江戸訛(えどなまり)といふけれど。おいらが詞(ことば)は下司(げす)下郎(げらう)で。ぐっと鄙(いや)しいのだ。正銘(しゃうめい)の江戸言(えどことば)といふは。江戸でうまれたお歴(れき)々のつかふのが本(ほん)江戸さ。これは又ほんの事(こっ)たが。何(いづれ)の国(くに)でも及(およ)ばねへことだ。然様(さやう)然者(しからば)。如何(いかゞ)いたして此様(かやう)仕(つかまつ)りましてござる。などゝいふ所は。しゃんとして立派(りっぱ)で。はでやかで。実(げに)も吾嬬(あづま)男(をとこ)はづかしくねへの。京女郎(きゃうぢょうろ)と対句(ついく)になる筈(はず)さ。ちっとお談義(だんぎ)が長(なか)くなるが。江戸は繁花(はんくゎ)の地(ち)で。諸国(しょこく)の人(ひと)の会(あつま)る所(とこ)だから。国%\の言(ことば)が皆(みな)聞(きゝ)馴(なれ)て通(つう)じるに順(したが)って。諸国(しょこく)の言(ことば)が江戸者(もの)に移(うつ)ろうぢゃァあるめへら。そこでソレ。正真(しゃうしん)の江戸言(ことば)は。孰(どれ)か夫だやら混雑(めったくさ)に為(なっ)たといふものさ。それでもお歴(れき)々にはないことだ。皆江戸訛(なまり)といふけれど。訛(なま)るのは下司(げす)下郎(げらう)ばかりよ。


【参考文献】

  • 安藤正次(1935)『国語発達史序説』p89
  • 安藤正次(1936)『国語史序説』
  • 東条操(1938)『方言と方言学』
  • 中村通夫(1941)「無粋独言の語学的価値」コトバ310(もっと前からの引用)。中村通夫(1948)に再録
  • 中村通夫(1942)「東京語の性格」『現代日本語の研究』。中村通夫(1948)に再録
  • 中村通夫(1948)『東京語の性格』p13,p205(もっと前からの引用)
  • 松村明(1957)『江戸語東京語の研究』東京堂 p13
  • 杉本つとむ(1960)『近代日本語の成立』桜楓社出版 p247248
  • 中村通夫(1962)「「江戸語」について」中央大学文学部紀要11
  • 杉本つとむ(1970)『にっぽん語』現代教養文庫 p223
  • 小松寿雄(1971)「近代の敬語2」『敬語史』大修館書店 p312
  • 杉本つとむ(1972)「近代の言語生活」『文体史・言語生活史』大修館書店 p370
  • 小松寿雄(1977)「江戸語の形成」『松村明教授還暦記念 国語学と国語史』p520,522
  • 土屋信一(1982)「式亭三馬の江戸語観」『国語学』131
  • 田中章夫(1983)『東京語 その成立と展開』明治書院
  • 真田信治(1985)「社会の拡大と標準語の推移」『歴史公論』113(1985.4)「江戸時代のマスメディア」 p52
  • 真田信治(1987)『標準語の成立事情』PHP新書 p47
  • 杉本つとむ(1988)『東京語の歴史』中公新書 p191
  • 飛田良文(1992)『東京語成立史の研究』東京堂出版
  • 水原明人(1994)『江戸語・東京語・標準語』講談社現代新書 p24
  • 菊池武人(1995)『近世仙臺方言書』 明治書院 p250
  • 田中章夫(2002)『近代日本語の語彙と語法』東京堂p287

posted by 国語学者 at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 近代語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。