2005年12月04日

富士谷御杖『北辺随筆』夜もすがら

〇夜もすがら
よもすがらといふ詞、後世には、いたく心得あやまれり。それは、此詞を誤れるにはあらで、ももじに麁なるなり。事がらによりて、終日こそあらめ、夜さへ終夜さあるべしやと思ふ時、「よもすがらとはいふべきなり。土佐日記に、【前日、「日ひとひ雨やまず、とあり。】「廿八日、よもすがら、雨やまず、けさも、とあるは、その終日ふりくらしゝ雨なればなり。又、「ニ日、雨風やまず。よもすがら神仏をいのる、とあるは、昼にはわたらねばなり。この二例のけぢめをおもふべし。後撰集に、【読人不v知。】「よもすがらぬれてわびつるから衣あふ坂山に道まどひして。千載集に、俊恵「よもすがら物思ふ比は明やらぬ閨のひまさへつれなかりけり。などよめるは、昼には必けぢめあるべき事の、しかあらぬをなげきて、もとはいへるなり。しかるを後世になりては、草根集に、【正徹が家集なり。】神楽、「よもすがらをだまきならでくり返ししづやの小菅うたふ声哉。一人三臣に、雅俊「よもすがら嵐もよきてはらふなよ月にさはらぬ花のしら雪。などあるは、神楽、月、ともに、ひるとのけぢめあるべき物にもあらねば、ももじ詮なし。されば、物がら事がらによる詞なりとしるべし。万葉集、巻十三、【長歌、上下略】「赤根刺昼者終爾野干玉之夜者須柄爾《アカネサスヒルハシミラニヌバタマノヨルハスガラニ》云々。【古今集にも、「よるはすがらに夢にみえつゝ、ともあり。】かく「は」とよめるに、むかへてもおもひうべし。
posted by 国語学者 at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 学史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/10201544
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。